
ノボアンディーナとは——東京で体験できるペルー料理の革命
東京でペルー料理の最前線を体験したいなら、いま注目すべきキーワードが「ノボアンディーナ」です。アンデスの食材と現代技法を融合させたこの料理運動は、ペルー国内のみならず世界の美食地図を塗り替えつつあります。今回は、その思想と、銀座で味わえる一皿の背景についてご紹介します。
話は10億年前まで遡ります。生命が単細胞から多細胞へと進化し、やがてカンブリア爆発と呼ばれる劇的な多様化の時代を迎えました。一夜にして海中に現れた無数の生命の形は、まさに「沈黙の終わり」でした。ペルー料理にも、これに似た瞬間がありました。長らく家庭料理や地方料理として静かに息づいてきたアンデスの食文化が、1980年代を境に一気に世界の表舞台へと躍り出たのです。その爆発の名がノボアンディーナ(Novoandina)でした。
ノボアンディーナは、シェフ・ベルナルド・ロカが1980年代に提唱した、アンデス原産食材の再評価運動から始まりました。キヌア、アマランサス、数百種にのぼるパパ(ジャガイモ類)、アヒ(唐辛子)、ルクマといった素材を、現代的な技法と感性で再構築する哲学です。その後、ガストン・アクリオやヴィルヒリオ・マルティネスといったシェフたちが、CentralやMAZといった世界のベストレストラン上位常連店を通じてこの思想を国際的に押し広げました。単なる伝統料理の復興ではなく、アンデスの生態系そのものを皿の上に立ち上げる試み——それがノボアンディーナの核心です。
そして東京・銀座のETHICAは、このノボアンディーナの思想を受け継ぐ場所のひとつです。MAZ Tokyo出身の松苗シェフが、中南米の食材と日本の四季・発酵文化を丁寧に編み合わせ、対話型のコースとして提供しています。席数は全16席で、カウンターのほか個室もあり、目の前で語られる料理の背景とともに一皿ずつ味わう体験は、まさに「進化の瞬間に立ち会う」ような時間です。希少なナチュールワインのペアリング、ベジタリアンコース、ヴィーガンへの対応も可能で、食の多様性を尊重した姿勢もノボアンディーナの精神と響き合います。
ETHICAは東京メトロ銀座一丁目駅3番出口から徒歩30秒、有楽町駅からも徒歩2分の好立地にあります。営業は火〜金曜の17:30〜22:30、土日は11:30〜14:30と18:00〜22:30、月曜定休。完全予約制で、毎月1日に翌月分の予約を受け付けています。東京でペルー料理の「現在地」に触れたい方は、ぜひ次回の予約開始日にカレンダーを合わせてみてください。10億年の沈黙の先にある、生命の爆発のような一皿が、銀座でお待ちしています。
